hinajiro読書録

読書録

Nation読了

hinajiro

 最初から最後まで純粋な子供たちを中心としたピュアな物語で、心が洗われた感じがしました。
 大人の男として認められるための儀式として、無人島で過ごした13歳の少年Mau。Nationと呼ばれる自分の故郷の島は留守にしている間に津波が襲い、生存者ゼロ。一人ぼっちで途方に暮れている中、嵐のため島にクラッシュした難破船で一人だけ生き残ってしまった皇族の少女と出会う。言葉の通じない二人は絵を描いて筆談するのだか、それすらままならない。そこへ次々と人々が居場所を求めて流されてくる。最初にやって来たのは年老いた預言者、赤ん坊、病気の女性、妊婦などなど「守らなければならない者」ばかり。
 赤ん坊のためにミルクを入手する手口はちょっとショッキングだし、13歳の少女が(しかも後のプリンセス)青空お産に立ち会いしたり、正当防衛とはいえ殺人に手を染めてしまったり、サメとの戦いや、人食い人種との争いなど色々なことが起こってハラハラするのだけれど、それでも嫌な感じが全くしない透明感のあるお話のままなのがとても不思議です。
 Lord of the Flies や「LOST」みたいな感じで、仲間同士で食べ物をめぐって争ったり、女性をめぐって喧嘩とか(児童書なのに私ったら)、大人になりきれていないMauに対して反乱を起こす者が出てきたりするのでは・・・と私なんかはあれこれ考えて心配になっていたんだけれど、島に流れてくる者はみなオリジナルの島民であるMauに敬意をはらっているし、完全によそ者の白人少女にも一目置いて信用し続ける。ピュアですなぁ・・・
 私が特に好きだったのは、すべてを失ったMauが神を信じることができなくなり、罵声を飛ばす場面が何度かあるところ。一体俺が何をしたというんだ。どうしてこんな目にあわなければならないのだ。こんな状態でも神を崇めなければならないのか。遠藤周作の「沈黙」を思い出します。
 アマゾンのレビューでは面白いくらい賛否両論でした。作者のPratchettは確固たる地位を築いているファンタジー作家なのですが、読者のたいていは作者のファン。いつものファンタジーではないとわかっていながら、「それでも素晴らしい」という意見と「いくらなんでもこれでは・・・」という意見の真っ二つに割れていました。ここまで評価の分かれる作品も珍しいのではないかな。
 私個人の意見としては「児童書なのだからこれでいいのかな?」という気もするし、やっぱり大人としては物足りない感覚は否めないかなぁというところですね。
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