hinajiro読書録

読書録

Slumdog Millionaire やっと読了

hinajiro

 結局長くかかってしまいました・・・・
 この本はびっくりするくらい映画とは別物です。だったら違う表紙のが欲しかったぁ・・・
 貧しいインド人の少年がクイズショーで全問正解し、大金を手に入れ、警察に疑われる、という設定だけが同じで、彼の生い立ちから、クイズの内容、そしてエピソードまで全く違っています。

 主人公は、原作では「教養がない」といっても、英語が堪能で、ただの貧しく無教養な少年に比べてずい分恵まれています。孤児院から引き取られた先がイギリス人牧師の運営する教会だったため、英語を流暢に話します。私が原作の中で一番好きな設定はこのことです。
 たまたま2回殺人を犯すことになり(!)逃亡生活を繰り返すので、貧しく辛い生活からは抜けられないのですが、オーストラリアのディプロマの家で重宝されたり、タジマハールでも英語でガイドをするなど、映画のように「生きるためには盗みなどの悪事だって仕方がないじゃん」的な要素が薄く、身についた語学力を武器に生き延びている姿が好きです。
 映画の中のギャングっぽい雰囲気もダニーボイルのものだし、根本になっていた生涯をかけて思い続ける女性の存在もありません。銃、意図的に子供たちを clipped にして金儲けをしようとする集団、タジマハールなど、ちょっとした共通ピースがあるのみで、ここまで原作に忠実じゃない映画って不思議です・・・・
 映画では主人公の「思いやりと愛情のベクトル」がラティカや家族へ向かっていることに対して、原作では広くその場面場面で出会った人々へ向かっています。そこが原作ファンを惹きつける点でもあるように感じます。

 セッティングは本当に unique で interesting ですが、各エピソードにインドにおける階層、戦争(パキスタンやイスラム教徒への感情)、犯罪、同性愛、DVなど様々な問題をとりいれている点で、ちょっと欲張りすぎているような印象を受けたことを否めません。エピソード自体も、なんていうか舞台がインドなだけで、使い古されている「ありがちな話」が多かったように思います。
 残念ながら、個人的には「The White Tiger」のような力強さが感じられなかったし、映画の方がインパクトが強かった、という点で、評価は 7 out of 10 

 作者あとがきのところで、エディターや家族への感謝の言葉の他に、グーグルへの感謝の言葉もあって微笑ましく思いました。
 Golders Green library という、ユダヤ人が多く読書人口が多そうな地域のわりには小さく、蔵書数もあまりない図書館で、この世界的ベストセラーが創作されたかと思うとなんだか感慨深いのですが・・・弁護士一家で育ち、外交官になり、ミリオン・ハウスに住みながらスラム出身の少年の声を代弁するのもどんなもんだろう、とか、恵まれた環境で育った作家の夢見がちな甘ったるさが少し見え隠れしていたような・・・・とか、あんまり心に響いてこなかったのでつい考えちゃいました。
 
 映画の感想は昨年の10月10日の記事です。
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